潮騒
目覚めた朝
マサキが戻ってきたのは、あれから一日半が過ぎてからだった。
いや、もっと正確に言えば、知らない男の人に抱えられて運ばれてきた彼は、殴られたような姿でぐったりとしていた。
何があったのかなんて、聞くだけ悲しくなるから止めておいた。
あたしがマサキの傍に付きっきりでいる間にも、時間は流れ、情勢は刻一刻と変わっている。
テレビとレンからの情報によると、地元の空気は恐ろしいほどにピリピリとしていて、今にも抗争が起こりそうなほどらしい。
石橋組の事務所を狙ったのは、対立していた堀内という組だという。
けれどあたしには全然わからない話で、石橋組長が殺されたという事実以外は、何が何だろうとどうでも良かった。
気付けばあれから2日が過ぎていた。
マサキの看病に疲れ、お店のある一階へと降りると、そこではヨウさんと、もうひとりの男の人が、テレビを観ながら怖い顔で話し込んでいる。
「まさか堀内が石橋なんかを相手にドンパチしやがるとはな。」
「そうっすね。」
「まぁ、今はもう堀内に昔ほどの力があるとは思えねぇけど、どっちが潰されちまうのかねぇ。」
「どっちにしても、あの街が6年前みてぇに混乱することは間違いっすよ。」
「…嫌な話だな。」
「そしたらタカさん、どうするんすか?」
聞いたような名前だったが、正直今はどうでも良かった。
疲弊した思考で立ち聞きしていたあたしは、ヨウさんが敬語を使えるなんて思わなかった、と、全然関係ないことを考えていた。
好きに使えば良いと言われていたので、勝手に冷蔵庫を開け、麦茶を取り出していると、
「そういやアンタ、マサキの女なんだって?」
話し掛けてきたのは、ヨウさんの隣にいる男――マサキを連れ戻してくれた、タカさんと呼ばれる人だった。
いや、もっと正確に言えば、知らない男の人に抱えられて運ばれてきた彼は、殴られたような姿でぐったりとしていた。
何があったのかなんて、聞くだけ悲しくなるから止めておいた。
あたしがマサキの傍に付きっきりでいる間にも、時間は流れ、情勢は刻一刻と変わっている。
テレビとレンからの情報によると、地元の空気は恐ろしいほどにピリピリとしていて、今にも抗争が起こりそうなほどらしい。
石橋組の事務所を狙ったのは、対立していた堀内という組だという。
けれどあたしには全然わからない話で、石橋組長が殺されたという事実以外は、何が何だろうとどうでも良かった。
気付けばあれから2日が過ぎていた。
マサキの看病に疲れ、お店のある一階へと降りると、そこではヨウさんと、もうひとりの男の人が、テレビを観ながら怖い顔で話し込んでいる。
「まさか堀内が石橋なんかを相手にドンパチしやがるとはな。」
「そうっすね。」
「まぁ、今はもう堀内に昔ほどの力があるとは思えねぇけど、どっちが潰されちまうのかねぇ。」
「どっちにしても、あの街が6年前みてぇに混乱することは間違いっすよ。」
「…嫌な話だな。」
「そしたらタカさん、どうするんすか?」
聞いたような名前だったが、正直今はどうでも良かった。
疲弊した思考で立ち聞きしていたあたしは、ヨウさんが敬語を使えるなんて思わなかった、と、全然関係ないことを考えていた。
好きに使えば良いと言われていたので、勝手に冷蔵庫を開け、麦茶を取り出していると、
「そういやアンタ、マサキの女なんだって?」
話し掛けてきたのは、ヨウさんの隣にいる男――マサキを連れ戻してくれた、タカさんと呼ばれる人だった。