潮騒
それから、何か作ろうとしたヨウさんだったが、米がないと言い出して、買いに行くからと裏口から出ていった。


取り残された、あたしとマサキ。


今にも雨が降り出しそうな窓の外は、お昼時だというのに薄暗い。


何か言うべきなのかもしれないが、でも話すこともなく続く沈黙の中で、



「ヨウさんが言ってたことは、間違ってねぇよ。」


不意に、ぼそりとマサキはそう呟いた。



「結局は俺ひとりが何をしようとただガキが騒いでただけのようなもんで、そういうの全部あの人にはお見通しだったんだ。」


「………」


「俺は、あの人から見ればくだらねぇことばっかりにこだわって、意地になって、そんで自棄を起こしてるだけだ、って。」


「………」


「けど、何も出来ねぇまま指咥えてるだけなんて悔しかったから。」


まるで後悔を並び立ててるように、彼はまた唇を噛み締める。



「…こんなんじゃチェンが浮かばれねぇよ。」


いくら最後は裏切られたからといって、マサキにとって、チェンさんは唯一無二の親友だったのだ。


だから、ヨウさんのように割り切れない気持ちはわかる。


けど、でも、受け入れて生きるとはそういうことなのかもしれないと、今のあたしは思っている。



「チェンさんはあの時、最期まで誰かを恨むようなことなんて言ってなかったし、疲れたからもう天国に行きたいって願ってたんじゃないの?」


「………」


「あたし達から見ればあんな終わり方だとしても、チェンさんは納得してたんだよ!」

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