潮騒
「お前が先に泣いてどうすんだよ…」


ぼそりと呟かれた台詞は、どこか困ったようだったけれど。


涙が拭われ、マサキによって引き寄せられる。



「すげぇな、あったけぇ。」


ひどく懐かしいぬくもりが愛しくて、あたしはまた涙が止まらなくなった。


今まで内に溜め込んでいた想いが、溶けて溢れ出してくる。



「…もうクスリとかしないでよっ…」


「うん。」


「…あたしのためとかいらないし、勝手にいなくならいでよっ…」


「うん。」


「…今まで死ぬほど心配したし、あたしがどんな気持ちだったかっ…」


「うん。」


まるで駄々っ子のようなあたしの並べ立てる台詞に、頭上からは同じ言葉が繰り返された。


本当にちゃんと聞いているのだろうか。


それでも支離滅裂ながら、散々言葉を並べ、肩で息をするあたしに彼は、



「負けたよ、お前には。」


そう言って、少し悲しそうな瞳を揺らしながら、口元を緩めた。


マサキはこてりとあたしの肩口へとこうべを垂らし、



「なぁ、もう一回だけ俺と一緒に生きてくれるか?」









< 384 / 409 >

この作品をシェア

pagetop