潮騒
「おい、起きろ。」


次に揺すり起こされた時には、すでに明け方ですらも近い時間となっていた。


いつの間に眠っていたのだろうかと驚いたが、マサキはテーブルにおにぎりを起き、「何か食っとけ。」とそれをあごで差した。



「こんな時間になるとは思わなかったけど、話してたらすげぇ長引いて、悪かったよ。」


「今までずっとヨウさんといたの?」


「あぁ。」


「何だったの?」


「まぁ、それは後でゆっくり言うから。」


言葉を濁した彼は、それよりさ、とあたしと同じ目線の高さまでしゃがみ込み、



「帰るぞ、地元に。」


「え?!」


「ん?」


「いや、何か急すぎてびっくりしちゃって。」


「お前が帰ろうって言ったんだろうが。」


それはそうだが、でも寝起きの思考は追い付かない。


けれど、マサキはまるで憑きものでも取れたような顔で、穏やかに笑っている。



「ヨウさんにはちゃんと伝えてあるし、もうここに用はねぇんだから。」


「…うん。」


「それに心配しなくても、あとのことは全部あの人が片付けてくれるって言ってるし。」


「………」


「俺ももう大丈夫だからさ。」

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