潮騒
マサキはきつくあたしを抱き締めた後、体を離した。


時計の針が進み、いつの間にか日付は変わっていて、それが少し寂しく感じられる。


気だるくて、シャワーを浴びる気力すら失っていたあたしに反し、マサキは体を起して煙草を咥えた。


カチッ、とライターの音が響いた。



「話があるんだ。」


少しかすれ、聞き取り辛い声。



「言わなきゃいけないことがある。」


今度ははっきりと、マサキはそう言った。


声色で、良い話ではないことはすぐに理解でき、だから考えるより先に首を振っていた。



「嫌だ…」


「聞けよ。」


「嫌だってば…」


「頼むからちゃんと聞いてくれ。」


マサキが少し震える息を吐くから、あたしは押し黙らざるを得なくなる。


誕生日の魔法が解けたから、現実が待っていることはわかっていた。


それでももう少しだけ目を逸らしていたかったのに、



「石橋が死んでから、ずっと考えてた。」


「………」


「やっぱケジメつけなきゃ前には進めねぇし、ヨウさんも理解してくれたから。」


マサキは真っ直ぐにあたしを見つめ、



「俺、自首するよ。」

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