潮騒
涙が溢れるあたしを困ったように見つめながら、それを拭ったマサキは、



「いくらお前が許してくれるって言っても、やっぱ自分が犯した罪は償いてぇんだ。」


「………」


「そうじゃなきゃ、俺はお前の兄ちゃんに顔向け出来ねぇもん。」


伸びてきた指が、あたしの首元に触れる。


ネックレスのハートが揺れた。



「残りの人生50年も一緒にいるんだとしたら、たった何年かなんて短いもんだよ。」


「………」


「誕生日だって今日だけで5年分くらいは祝ってやったろ?」


「そういう問題じゃないよ!」


「これからどうなったとしても、俺はお前のこと想ってるから。」


後になって考えると、それはもしかしたらプロポーズだったのかもしれないけれど。


でもあたしはやっぱり駄々っ子のように、嫌だ、嫌だ、と首を振り続けた。



「これからのことちゃんと考えようって言ったの、お前じゃねぇかよ。」


「………」


「失うためじゃなくて、手に入れるためだ。」


マサキは小さく笑いながら、



「耳塞いでたら俺の言ってること聞こえねぇだろ?」


と、あたしの両手を掴み、代わりにその耳元へと囁くように、



「愛してるって言わせろよ。」

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