潮騒
そういえば、とレンは言った。



「この前カオルちゃんに会ったけど、来年は受験生だって嘆いてたなぁ。」


「あたしのところに勉強に教えてって押し掛けてきたよ。」


「あぁ、俺がルカに聞けって言ったからじゃね?」


「ちょっと、自分が数学苦手だからってアンタまたあたしに面倒なことを押し付けてるでしょ!」


「俺は“馬鹿な詩人”だからな。」


「嫌味か!」


「でもお前の妹なんだから頑張れよ、家庭教師。」


「やっぱ嫌味じゃんか!」


ぎゃあぎゃあと騒ぐ車内。


わけのわからないレゲエが大音量でウーハーを揺らす。



「まぁでも、良いもんだよな。」


「何が?」


「親兄弟だけが“家族”ってわけじゃねぇし、血の繋がりがすべてじゃねぇけどさ、こういうのもアリだよな、ってこと。」


“こういうの”がどういうのかわからず首を傾げていると、



「周り全部が大事なもので溢れてるって意味だ。」


レンが珍しく良いことばかり口にするから、ちょっと笑えた。



「さすがは詩人!」


「馬鹿にしやがって。」





ねぇ、マサキ。

あたし毎日楽しいよ。







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