潮騒

手繰り寄せ

今日は久しぶりにゆっくりと休日を過ごせた気がする。


特に誰かと会う約束は入れず、ひとりでショッピングをしたり、美容室でカラーをしてもらったり。


世の中で一番癒しを求めているのは、実は接客業の人間なのだと、どこかで聞いたことがある気がするが。


たまにはパーッとお金を使うのもアリなのかもな、なんて思いながら、帰宅した頃には夕方になっていた。


で、シチューを作った。


料理は好きでも嫌いでもないが、でも休みの日くらいはと、色々と遊び感覚で試してみたりもする。


まぁ、余れば勝手にやって来るレンが食べるし、だから冷凍しておけば良いだけのことだ。


一通り調理を終えたところで一服しようとテーブルに置いていた煙草を手に取ったが、運悪くそこに中身はなかった。


買い置きも切らしていて、あたしはため息混じりに肩を落としてしまう。


コンビニはマンションの斜向かい。


上着を羽織り、財布だけを手に部屋を出た。


寒々とした風が吹き抜けて、この時間帯はもう冬と言っても良いほど日暮れが早くなっていた。


急ぎ足でコンビニに入り、煙草と雑誌を適当に買ってレジを済ませ、店を出た時、



「あ!」


という声が頭上から響く。


顔を上げるとそこには、マサキがいた。


いや、彼は友人らしき男と一緒にいる、と言った方が正確だったかもしれないが。



「何、知り合い?」


サングラスの方の男があたし達を交互に見る。

< 42 / 409 >

この作品をシェア

pagetop