潮騒
顔半分を覆ったそれの所為で彼の表情は読み取れないが、



「あぁ、マサキが突っ込んだ女か。」


軟派な台詞だ。


まさかそうはっきりと言葉にされるとは思いもせず、きょとん顔のあたし。


マサキは心底うざったそうに舌打ちを吐き捨てた。



「ちょっとお前うるせぇから黙れよ。」


「はいはい、俺のこと邪魔だって言いたいんだろー。」


わかりましたよー、良いけどねー、なんて彼は口を尖らせる始末だ。


子供みたいとでも言おうか、よく喋る男。


あたしはちょっと圧倒されてしまい、引き気味に曖昧な笑みを浮かべることしか出来ずにいると、



「可愛い子だね。」


おもむろに彼はサングラスを外して笑った。


その瞳にまた驚いた。


左右の色が違う、オッドアイ。


犬や猫など、遺伝の関係で稀に生まれてくる、虹彩異色症だ。


彼の右目は普通だが、左目だけが、まるでカラコンでもしてるみたいにゴールドになっている。



「まちゃまちゃにヒドイことされてない?」


優しい口調のわりに、背筋がぞくりとするような声色だった。


彼は首を傾け、目を細めてあたしを見る。


けれどマサキは遮るように割って入り、



「つーかお前、マジで余計なことべらべら喋るなっつってんだろ。」

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