潮騒
テーブルに並べたのは、シチューとハンバーグと、付け合わせのサラダ。


意外だとでも言いたげに、マサキはそれを見て目を丸くしていた。



「すげぇな、俺ちょっと感動した。」


「別に普通でしょ。」


「や、でもさ、こういうの普段食わねぇから。」


何だか彼は、見るからに酒ばかり飲んでるようなイメージなのだが。


少しばかり呆れた目で見てしまうが、マサキは気にすることもなく食事の手を進めた。


こうやってゆっくりと向かい合うのは、やっぱり気恥ずかしいものだ。



「何か変な感じだな。」


彼もまた、同じように思ったのかもしれない。


目が合って、ちょっと笑った。


こんなにも時間の流れが穏やかに感じさせられるというのは、今まであったのかも思い出せない。


少なくともお母さんといた頃は、こんなことなんてなかった気がする。



「俺さ、母親いないんだよね。」


「……え?」


「だからおふくろの味みたいなの、何か嬉しいっつーか。」


けれどマサキはそれが当然みたいに言うから、返す言葉が見つけられない。


そんなあたしを見て、「あぁ、悪ぃ。」と彼は漏らす。



「良いの。
あたしもお父さんいないし、ちょっと似てるなぁ、って勝手に思っちゃっただけだから。」


少し不謹慎だったかもしれない。


でも、マサキはやっぱり困ったように笑うだけだった。

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