潮騒
華やかさと、嘘にまみれた場所。


18でこの世界に入ってから、2度店替えをして辿り着いたのが、ファンタジー。


この街では有名な店の、あたしはナンバーワンなのだ。


それはある日のこと、閉店時間まで残り一時間ほどとなり、そろそろお客もまばらになり始めた頃だった。



「ルカさん、ご指名です。」


黒服の言葉に、こんな時間なのにと肩をすくめずにはいられない。



「誰?」


「それが、ご新規の方なんですけど。」


新規で、指名?


まぁ、ないわけではないので特別なことではないけれど、視線を移せば卓にいるのは、まだ若い男がひとり。


あたしは席を立った。



「はじめまして。
ご指名ありがとうございます、ルカです。」


にこやかに笑ってやるが、彼は表情ひとつ変えることもなく、あたしに座るようにと促した。


こういった客で、しかも連れもいないとなると、ちょっとやりにくいと思ってしまう。



「ファンタジーで一年もナンバーワン張ってる女がどんなもんか、見たくてな。」


切れ長の瞳の奥に色はなく、とても堅気には見えない感じだ。


男は白灰色の煙を吐き出しながら、慣れた様子で酒を煽る。



「がっかりさせちゃいました?」


「さぁ、どうだろうな。」


ふっと笑い、彼はあたしの耳元に言葉を寄せた。



「それより、終わったらアフター付き合えよ。」

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