潮騒

血の繋がり

真っ昼間にけたたましいほどの着信音と共に、レンによってモーニングコールをされ、寝不足も重なって不機嫌なあたし。


でも彼は予告通りにうちへとやってきて、勝手知ったるように冷蔵庫を漁っている。



「アンタねぇ、頼むからあたしの睡眠妨害しないでよ。」


「だって休みの日は早起きしないと勿体ないっしょ。」


「こっちは仕事なんだっつーの!」


と、言ったところで、それがレンに通じるはずもない。


彼は飲み物片手に咥え煙草でソファーに座り、テレビのリモコンに手を伸ばす。


まったく、誰の家だと思っているのか。



「で、何か用?」


怪訝な顔して聞いたあたしに対し、レンは宙に向かって長く煙を吐き出しながら、



「今日も宮城が眠ってる病院行ってきたんだけどさ、何か久々に虚しくなっちゃって。」


「………」


「自業自得の罪滅ぼしだってわかってても、いつになったらアイツは目を覚ますんだろう、いつまでこんな毎日を繰り返さなきゃならないんだろう、ってさぁ。」


あれからもう3年以上だ。


宮城くんは一向に目を覚ます兆しはなく、家族でさえも半ば諦めているのだとか。


レンの背負った、それが十字架。


だから安易な励ましの言葉なんて、どれほど無意味なことだろう。



「それで愚痴りに来たってわけ?」


「まぁ、ついでに一緒に飯でも行かねぇかな、と思ってさ。」


ここで断るほど、あたしはひどい人間にはなりきれない。


幸いまだ時間に余裕があるし、しょうがないね、と肩をすくめてやった。


レンは苦笑いだけを返してきた。

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