潮騒
「ねぇ、ファンタジーのルカちゃんでしょ?」


彼は張り付けたような笑みを浮かべたままに問うてくる。


その前髪の隙間から覗く瞳は、やっぱり不思議な色をしていると思った。



「マクラ嬢って噂はたまに聞くけど。」


鼻歌混じりの台詞だ。


いちいち相手にするのも馬鹿らしく思えてきて、無視のひとつでも決め込んでやろうかと思ってみれば、



「まぁ、別に俺は他人が何してようと興味ないっていうか、関係ないから、そういう噂なんて嘘でもホントでも良いんだけど。」


「………」


「でもマサキと仲良いなら、どんな子なのかなぁ、って思ってさ。」


一体何が言いたいというのか。


どうにも本心が掴めないような態度や言葉尻に、少し苛立ちそうになる。



「じゃあそっちも名前くらい名乗ったらどうですか?」


あぁ、そうだった、と笑った彼は、



「俺、チェン。
改めてよろしくねー。」


たまにマサキが電話で言ってる名前は、やっぱりこの人のことだったらしい。


オッドアイの瞳は弧を描く。



「もしかして、ハーフか何かですか?」


「さぁ、俺よく知らないんだよね。」


「…知らない、って。」


「だってマジで自分がどこの国の人かわかんないんだもん。」

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