潮騒
そんなに頭を下げられると、こっちが悪いみたいで嫌になる。


あたしはため息を混じらせた。



「別に良いけどさ。
あたしなんかのご機嫌取ったって、無意味なだけだよ。」


「………」


「それに、仲良くしてたらアンタまで立場悪くなるだけじゃない?」


言うと、彼女はくすりと笑みを零し、



「ルカさんって、優しいんですね。」


「…は?」


「ぶっきら棒に振る舞って人を寄せ付けないようにしてるだけで、本当は面倒見良さそうだし。」


この子は一体、何なんだろう。


けれど美雪はあたしの横へと腰を降ろし、屈託のない笑顔を向けてきた。



「絶対みんなが言うような人じゃないな、って思ったんです。」


「けど、マクラは本当だよ。」


どうしてこんなことを言ったのかはわからない。


それでも彼女は笑顔を崩すことなんてなく、



「マクラが良いか悪いかは別として、お金を稼がなきゃならない時に、本当に困窮してたとしたら、手段なんて選んでられないと思うんですよね。」


「………」


「ルカさんって自分のためっていうよりは、誰かのためにお金を稼いでるように見えるし、他人がそういうのを責めるべきじゃないですよ。」


変な女だ。


財布を拾ったら間違いなく警察に届けそうな顔をしてるくせに、妙に物分かりの良いことを言う。



「アンタ、何でキャバなんてやってんの?」

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