潮騒
ぎくりとした。


が、それを顔には出さず、そんなもん必要ないから、とあたしは、窓の外へと視線を投げた。


脳裏をよぎったのは、マサキの顔。


確かにそれは恋に似ているのかもしれないけれど、でもあたし達が一緒にいたところで、幸せになんてなれるはずはないから。



「第一マクラやってる女に本気になる男が、どこにいるのよ。」


呟くあたしに、けれど美雪は少し驚いたような顔をして、



「でもその言い方だと、好きな人はいるけどー、って風に聞こえますよ?」


「………」


「あ、図星でした?」


いたずらに笑った顔を見て、鋭い女だと思った。


別に勘ぐられているというわけでもないのに、隠していたいと思うのは、きっとあたしの悪い癖なのだろうけど。



「好きな人がいたら、休みの日に女同士で遊んだりなんかしないっつーの。」


先ほど美雪が言ったまんまを返してやると、



「それ、ひっどーい!」


彼女は子供みたいな顔で頬を膨らませる。


少しだけ笑ってしまった。


レンといる時ともまた違う、変な感覚がくすぐったい。


美雪のことは相変わらず苦手ではあるけれど、でも嫌いになりきれないというか、どこかペットみたいな感じだ。


だからまぁ、言うほど悪いものでもないのかもしれない。

< 77 / 409 >

この作品をシェア

pagetop