潮騒
そして夕暮れも差し迫った頃、満足したらしい美雪と共に店を出た。


が、彼女はあたしの隣で、次はどうしようかなぁ、なんて考えを巡らせている。


もう付き合いきれない、と肩をすくめ、通りへと視線を向けた時。


その時、目の前を横切った子を見た瞬間、



「ちょっ、ルカさん?!」


あたしは美雪の腕を引き、その場から逃げるようにきびすを返していた。


息を切らして細い裏通りに入り、顔を覆う。


同じ街で暮らしているのだから、これは珍しいことじゃないと、何度も自分に言い聞かせてきたはずだった。


けど、でも、いつも怖くなって背を向けてしまう。


向こうはあたしのことなんて知りもしないというのにね。



「ルカさん!」


美雪に肩を揺すられ、はっとした。



「…あっ、ごめん…」


「ちょっと、いきなりどうしたっていうんですか?」


言えるはずなんかない。


先に生まれたのはあたしなのに、なのに腹違いの妹の存在に恐怖してることなんて。


途端にまた、左手首の古傷が疼き出す。


カオルちゃんの姿を見ただけで、あたしはいつもこうなってしまうのだ。



「ホント何でもないし、こっちに雑貨屋あるの思い出したから。」


無理して笑顔を向けるあたしに、けれど美雪は、



「嘘ばっかり。」

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