潮騒
「おい、いきなり何なんだよ!」
腕を掴まれ無理やり立たされるが、足元さえもおぼつかない。
マサキの顔が見られなかった。
「ったく、どんだけ探したと思ってんだ。」
決して犬が嫌いなわけではない。
本当はあの日、犬が見たいと言ったあたし自身が許せないだけなんだ。
「…ごめ、なさい。」
ごめんなさい、ごめんなさい。
まるでうわ言のように呟くあたしに彼は、ため息だけを混じらせた。
泣きたくはなかった。
だから顔を俯かせたのに、手首は千切れてしまいそうなくらいの痛みを放っている。
「…あっ…」
でもそこをさすると、いつも愛用している時計がないことに気が付いた。
マサキの部屋に忘れてきたんだ。
けれどあたしは痛みに耐えきれず、掻き毟るように爪を食い込ませた。
なのに、
「ルカ、おい!」
腕を掴まれ制される。
手首の古傷が、乾いた風に醜く晒された。
「…やめっ…」
それでもマサキはあたしの顔を見て、
「なぁ、前から思ってたけどさ、この傷って、何?」
腕を掴まれ無理やり立たされるが、足元さえもおぼつかない。
マサキの顔が見られなかった。
「ったく、どんだけ探したと思ってんだ。」
決して犬が嫌いなわけではない。
本当はあの日、犬が見たいと言ったあたし自身が許せないだけなんだ。
「…ごめ、なさい。」
ごめんなさい、ごめんなさい。
まるでうわ言のように呟くあたしに彼は、ため息だけを混じらせた。
泣きたくはなかった。
だから顔を俯かせたのに、手首は千切れてしまいそうなくらいの痛みを放っている。
「…あっ…」
でもそこをさすると、いつも愛用している時計がないことに気が付いた。
マサキの部屋に忘れてきたんだ。
けれどあたしは痛みに耐えきれず、掻き毟るように爪を食い込ませた。
なのに、
「ルカ、おい!」
腕を掴まれ制される。
手首の古傷が、乾いた風に醜く晒された。
「…やめっ…」
それでもマサキはあたしの顔を見て、
「なぁ、前から思ってたけどさ、この傷って、何?」