潮騒
「アンタちょっとお節介って言われるでしょ。」


笑って聞くと、彼女は困ったように肩をすくめてから、



「でも、あたしルカさん好きだから。」


「…そういう趣味だったの?」


「何でそうなるんですか、違いますよ!」


百面相なヤツだと思う。


美雪は口を尖らせて携帯を取り出した。



「ほら、ちゃんとルカさんのこと“大親友”のフォルダに登録してるんですからね!」


レン以外にまともな人付き合いをしてこなかったあたしなので、また笑ってしまった。


どうしてこう、美雪という人間は、あたしの考えでは及ばないことばかり言うのだろう。


息を吐くと、力が抜ける。



「良いよ、今度行こうか。」


「…え?」


「フットマッサージのお店、教えてくれるんでしょ?」


瞬間、彼女はぱあっと顔を明るくさせた。


それは無意識だったのかもしれないけれど。


嘘だらけのこの場所で、あたしはたったひとつで良いから、本物を求めていたかったのかもしれない。



「あたしゴールド会員だから超安くしてもらえるんですよ!
でね、でね、担当の人がすっごい格好良くて、絶対ルカさんも惚れちゃいますからー!」


美雪はあたしの体をぺしぺしと叩きながら、饒舌だった。


余程何か嬉しかったのか、ちょっと馬鹿っぽいけれど。


でもそれが彼女なりの優しさだいうことは、わかってる。

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