潮騒
疲弊した体を押して帰宅すると、玄関先でうずくまっている人の影。


こんなこと、もう何度目だかも思い出せない。



「レン、風邪引くよ。」


レンは頼りない瞳を持ち上げ、腹減ったぁ、と呟いた。


ドアを開けてやると、彼は大の字になってフローリングへと倒れ込む。


その体は嫌になるほど酒臭い。


一体どこでどれだけ飲んだら、こんな風になれるのか。



「ちょっと、そこで死なれちゃ迷惑なんだけど。」


「んー。」


「てか、うちは介護施設じゃないって何回言わせんのよ。」


「んー。」


生返事だけ、か。


レンは年に何度かこんな風になっては、グダグタのままうちの前で倒れている。


ため息混じりにその体を何とか起こしてやり、ソファーまで運んだ。


彼の少し充血した瞳は、まるで先ほどまで泣いていたかのよう。



「大丈夫?」


なんて聞いたって、まともな返答はないけれど。



「とりあえず飲み物持ってきてあげるから。」


と、コートを脱いだ時だった。


ポケットからはらりと落ちたのは、さっき美雪に押し付けられたプリクラだった。


こんなとこに突っ込んだまま、忘れてた。



「これって友達ー?」

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