潮騒
何だ、喋る余力は残ってたのか。


なんて、至極どうでも良いことを思いながら、水を汲んだコップを差し出した。



「友達っていうか、まぁ、店の子だけど。」


「へぇ、随分と珍しいな。」


レンはへらへらと笑っている。


さすがは酔っ払いらしく、あまりろれつが回っていない感じだけれど。


彼はソファーに寝そべったまま、煙草を咥えた。



「あー、たまにはこういう可愛い子とエッチしてぇー。」


「はいはい、わーかったから。」


「ルカちゃーん、可哀想なボクを慰めてー。」


頼むから、叫ばないでほしいのに。


あたしは話半分で聞きながら、絡まれたくだけはないと、心底思った。


レンはひとしきり手足をばたつかせた後で、急に体を弛緩させ、



「冬になると嫌だよな、寂しくなっちゃってさ。」


こいつだって普通の人間で、ただの男だ。


だから人並みにぬくもりを求め、カノジョが欲しいと思うことだって当然なのに。


なのにそれが悪いことだとでもいうような顔で、自分を責めるばかりする。


あぁ、まるで鏡の中のあたしみたい。



「レン、ちょっと落ち着きなよ。」


「………」


「ほらぁ、ちゃんと体起こしてさぁ!」

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