人魚姫は籠の中で。
アイロと共に香りの元へと向かい、城を覆っていた森を抜けた。
…その瞬間、今までとは比にならないくらいの甘美な香りが鼻をかすめた。
おそらく香りが漂う方向は―…
「……海ですね。段々香りが強くなって…」
「少し黙れアイロ。何か聞こえる」
足を進める度にはっきりと聞こえてきたそれは、誰かの歌声だろう。
澄んでいて綺麗な歌声。
聞いていて、とても心地良い。
これを本能的に欲しいと思った。