人魚姫は籠の中で。
血に反応してしまうのは、ヴィアンのせいね。
ふぅーっと息をはき、立ち上がった瞬間
「魔王がいないときに、1人で出歩くなんて不用心な人魚のお嬢さんだな。そんなに美味そうな匂いふりまいて…」
そんな声が後ろから聞こえ、とっさに振り向くとそこには、はぁはぁと息を荒くした男が私を見ていた。
ゾクッと冷や汗が流れる。
その目はギラギラしており、欲望をちらつかせるような色をしていた。
この目は、捕食者の目だ。
怖い…この人、私の血を狙ってる。
「魔王が人魚を城に連れ込んでんのはバレてんだよ。美味そうな匂いさせやがって」
そう言いながら、ゆっくりと近づいてくる男。
「やだっ!来ないでよ!」