Brute ―あいのうた、きみのうた―
彼女はまた目をしばたいて、不思議そうに俺を見ている。
俺は顔が更に熱くなるのを必死に抑えながら、彼女に言った。


「そのCD。
俺もそれ、気に入ったし。
半分出すから、俺にも聴かせて。」


彼女はそれを聞くと、眉を少し下げ、困ったように笑った。

「え、いいよ、そんな。
普通に貸すよ。」

とは言え、男としてそこで引き下がる訳にもいかなかった。

「俺のお墨付きなのに、当の本人が持ってないのは可笑しいだろ?」


今思うと、『俺が買ってやる』くらい言えば良かったのだが、その時の俺にしてみればそれが精一杯だった。



すると彼女はもともと下がり気味の目尻を更に下げ、ため息をつくように笑って見せた。


「じゃあ、お願いします。」

そう言って試聴コーナーに並べられたCDを手に取ってみせた。
そこには『Brute』というバンド名が曲名よりも大きく記されていた。
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