Brute ―あいのうた、きみのうた―
最初は俺の瞳をまっすぐに見つめ返した。

放課後の皆が帰った教室で、隣の席に座った俺の瞳を。
帰ろうとしていた香波の隣の席まで行き、ブルータスの話をしていた時のことだ。


その一瞬の後に、目をしばたかせた。
更に一瞬の間をおいて顔中を真っ赤に染めた。
そして焦ったように声を上げた。

「えっ、…えっ?えっ?」

どうしてこう、驚いた顔も焦った顔も可愛いんだろう。


俺はといえば、初めてこんなことを言った緊張からか、凄まじい勢いで心臓が体中を叩いている。
しかしそれを向こうに感じさせないように振る舞いながら、彼女の反応を見ていた。


「つ、付き合う…って、わ、私、と…?
…瀬岡くん…が?」

香波は顔を真っ赤に染めたまま、自分の顔を指差して聞いてくる。


その慌てぶりが可愛くて可笑しくて、俺はつい息を漏らしながら答えた。

「この状況で、それ以外誰がいるんだよ。」


香波は、既に真っ赤な顔を更に赤い絵の具で塗り潰したように赤く染める。
香波の顔の赤さに上限はないのだろうか。
< 16 / 31 >

この作品をシェア

pagetop