Brute ―あいのうた、きみのうた―
香波の真っ赤な頭は空気が抜け、萎んでいくように垂れ下がった。

「よ…ろしく…お願い…します…。」


どうしよう。
胸が熱い。
嬉しいのに、涙が出そうだ。


「…俺、竹内のこと、本当に好きだから。
…大切にする。絶対に。
約束する。」


頭がいっぱいいっぱいで、どう話していいかわからなかった。
だけど、照れ臭いけど、出来るだけ隣の席の香波を見つめて、言葉を紡いだ。

俺の言葉を聞くと、香波はゆっくりと、古い扉が開くくらいにゆっくりと頭を上げた。
その真っ赤な瞳には涙がにじんでいて、少し慌てた。

「ありがと…。
私も、瀬岡くんが好き。
…大好き。」


それを聞いてまた胸が熱くなった。
心臓が焼け焦げてしまわないかと、不安に思うほどだった。
きっと今、俺の顔は香波くらい、もしかしたらそれ以上に、赤いかもしれない。



俺達が付き合いはじめた、高3の4月30日のことだった。
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