Brute ―あいのうた、きみのうた―
手を繋ぐのに1ヶ月。
キスするまでに3ヶ月かかった。

時間をかけすぎだと人には言われるだろう。
だからあまり香波とのことは友達にも話さなかった。

それでも初めて手を繋ぐ少し前から、俺は香波を『香波』と呼ぶようにした。
かなり恥ずかしかったけれど、彼女をいつまでも苗字で呼んでいては一生何も出来ない気がしたのだ。

香波は呼ばれると、やっぱり顔を赤くして、激しい瞬きをした。


少し戸惑った後、更に顔を赤く染めながら、『行人くん』と呼んでくれた。


もちろん俺の名前が『瀬岡行人(セオカ・ユクト)』だから。
名前呼びに慣れてからは香波は俺を『行(ユク)ちゃん』と呼んだ。


『香波』『行ちゃん』呼びに慣れても、お互いの身体に触れるのは、まだ緊張した。
健全な高校生だというのに、だ。
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