Brute ―あいのうた、きみのうた―
見事、第一志望合格。


俺は自分のことのように嬉しくなって、握手をしたり、肩を叩いたり、頭を撫でたり、これまでにないほど香波に触った。

そのことに顔を赤らめている香波に気付くと、我に返って手を離し、「おめでとう」とだけ言った。

それからカラオケに行き、お祝いをした。

香波の好きな『Your living』も歌ったりして。


何時間一緒にいても、その日は何故だかいつも以上に離れがたかった。
受験が終わった安堵か、合格で気持ちが高ぶったせいか。

とにかく香波を離したくなかった。
今の香波は俺だけのものだと思いたかった。


それを直接香波に言った。
香波はやっぱり、顔を赤く染めていた。
かく言う俺も恥ずかしくて、香波に負けず劣らず赤い顔をしていただろう。



「…うん。」
俺には永遠にも感じられた間を置いて、香波は小さな声で答えた。

恥ずかしさのあまり下げていた顔を上げると、香波も真っ赤な顔を上げているところだった。
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