Brute ―あいのうた、きみのうた―
とは言え、二人とも実家暮らしの高校生だ。
場所も金もない。

あるとすれば、ラブホだろうか。

いや。
大学に合格した日で、初めて共に過ごす夜だ。
いくらなんでもそれじゃあ品も雰囲気もあったもんじゃない。


俺はコンビニで香波が雑誌を見ている間に、ATMで子供の頃からコツコツ貯めた金を全額おろした。


そのまま携帯をいじりながら弁当なんかを眺める振りをして、夜景の綺麗そうな、俺達の『初めて』に相応しいホテルを探す。

その中の一つを選び、香波には気付かれないようにコンビニを出ながら電話をかけた。



幸にもそのホテルには空きがあり、これから宿泊する旨を伝えて電話を切った。


素知らぬふりでコンビニに戻ると、付き合う前からよく知っている、あの真剣な横顔が、女性ファッション誌に向けられていた。


「香波。」

もう呼び慣れた下の名前の呼び捨て。
それに反応して顔を上げた香波に行き先を告げず、ホテルに向かった。
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