Brute ―あいのうた、きみのうた―
それは、大学3年の頃だっただろうか。


「バイト、減らしたんだ?」

「うん。あれ、言ってなかったっけ?
就活も始まるしって思って。」


そうだ。そう言っていたから、確か秋口だ。


いつも香波が入っているはずの時間にカフェに寄ってみると、香波はいなかった。
だから次に香波に会った時に聞いた、その答えがそれだった。


香波には第一志望があるらしく、そこの採用試験に向けた準備をしていた。

一方俺は、大した夢も希望も将来の見通しもなく、世の中は『就職氷河期』と言われているにも関わらず、何とかなるだろうという、根拠のない自信だけがあった。


そうして授業やバイト、いくつかの会社説明会を受けながら、大学生活も4年目を迎えようとしていた頃。
当然ながら、俺に内定という二文字は縁遠く、さすがに少し焦りはじめた頃。


良い知らせと悪い知らせが同時に舞い込んできた。
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