Brute ―あいのうた、きみのうた―
良い方は、香波の第一志望への内々定。


悪い方は、ブルータスの黒澤陽真の癌発覚。
ブルータスのドラマーで、そのほとんどの曲を手がける、実質的なリーダーである彼の病気は、バンドの一時活動休止を伴うものだった。


その知らせを聞いて、俺は自分で思っていた以上の絶望感を覚えた。

もちろん、ブルータスが好きだからというのもある。
だがそれだけではなく、自分が置かれている、あまり楽観出来ない状況も相まっての感情だっただろう。


「大丈夫だよ。
陽真はきっと病気になんか負けないし、ブルータスもすぐ復活する。
その時には行ちゃんの就職も決まってるよ。
そしたら、一緒にライブ行こう?」

香波はショックを受ける俺を見てそう言った。


だけどそれは、俺にとって何の励ましにもならなかった。
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