Brute ―あいのうた、きみのうた―
この竹内香波(タケウチ・カナミ)は、高2からのクラスメイトだ。


彼女に対しての第一印象は『真面目そう』。あとは『大人しそう』だ。
男と話しているところは、見たことがなかった。

だからといって暗いというでもない。
女友達と話している時はいつも明るく、朗らかに笑っている。


では男から人気がないからかと言えば、それも違うだろう。

例えば、制服のスカートを極端に短くしたり、着崩したりはしていないが、そこに清潔感がある。

例えば鎖骨に届くくらいの黒髪は、さらさらと風になびくと花が開いたような甘い香りがする。

例えば体型も細すぎず、ふわりと柔らかそうなラインに見える。

例えば顔だって、ぱっと目を引く美人と言うほどでもないが、控えめな奥二重の目は、目尻がほんの少し垂れ下がって、柔らかい印象を人に与える。

例えば小振りな口元も、なだらかな線を描く鼻筋も、それら一つひとつ上手い具合にバランスがとれている。

これで男にモテない訳がない。

彼女自身が控えめな子だから、男も表立っては言わないだけで、隠れファンは多いはずだと俺はにらんでいた。


そんな彼女と席替えで隣の席になったのは、この日から更にさかのぼること約半年。
高2の2学期のことだ。
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