Brute ―あいのうた、きみのうた―
隣の席になって、気付いたことがある。

それは、第一印象の『真面目そう』は、間違っていなかったということだ。


授業中、左隣を眺めると、必ず彼女はまっすぐな瞳を教室前方に向けていた。
その顔に長いまつげが落とす影もまた、彼女の顔のバランスの良さを際立たせていた。


いつだったか、俺がその横顔を眺めていると、前触れもなくあの丸々とした瞳が俺の目を見たことがあった。
その時も、ほんの少し垂れた目をしばたかせた。

その仕草を見たときに、俺の心臓は熱湯に入れられたように急激に熱を増し、大きく跳ねた。


その理由を考え、初めて自覚した。



『彼女が男にモテる』と思っていたのは、自分の気持ちを一般論にすり替えたかっただけなのだと。
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