Brute ―あいのうた、きみのうた―
「え?」

突然発せられた彼女の言葉に、緊張で高鳴る胸を抑えつつ、もう一度彼女の声を聞こうと疑問詞で返した。


「このバンド。
最近デビューしたらしくて。
聴いてみてたら、結構良いなぁって。」


彼女は白く丸い小さな手で、黒くてデカいヘッドフォンを差し出してきた。

聴いてみろ、ってことか。

そう理解した俺は、彼女の手からヘッドフォンを受け取った。
その時に、少しだけ彼女の手に触れてしまったことで、俺の指先は高い熱を持ち、震えた。

彼女は俺と触れた指先をそっと握りしめ、自分の胸元へ持って行った。
その時、その頬がほんのりと赤く染まったように見えたのは、気のせいだっただろうか。


俺は体中がぐつぐつと沸騰しているようで、震えながらもヘッドフォンを耳に持って行き、音に集中させる努力をした。
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