新選組は恋の香り―前編―

なにも考えずに
傷に優しく触れる…


「この時代に平助君がいなかったらこの痕が出来なかったのに…」


口から零れ落ちた言葉に自分でも驚いた。

違う。
平助君がこの時代にいなかったら
私はきっと、きっと
恋をする楽しみとか知らなかったはずだ。


それに平助君がいるから
きっと私はこの時代に来たんだ。



「…葵?」


ゆっくりと平助君がまぶたを開ける。

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