愛して。Ⅱ ~不良俺様ボーイズ×絶世美少女~【完】
空色と青色を区切る水平線、カンカンと照り下がる真夏の太陽。
車が止まって扉を開ければ、海風が肌を刺激した。
「海…」
「海だよ海っ」
「海だな」
「ああ」
「つーか暑くね?」
「うん暑い」
「夏だからね」
上からあたし、菜穂、タカ、蓮、大河、隼、颯。
好き勝手に言い合って、あたしは目の前の建物に目を移す。
一度目を逸らして、間違いかと思ってまた見上げる。
「真梨、なんで挙動不審なわけ?」
心底不思議そうにあたしの顔を覗き込む菜穂だけれど、どう考えてもおかしい。
いや、あたしの目がおかしいのか。
みんなが正常であたしの目がおかしいのか。
目の前には旅館。
品の良い、和風の旅館。
きっとあたし達が泊まる所だろう。
そこまではいい。
そこまではいいんだ。
だけど……やっぱりあたしの目は、おかしくなってしまったのだろうか。
旅館の看板に、
“旅館 加賀美”
そう書いてあるようにしか見えないんだ。