愛して。Ⅱ ~不良俺様ボーイズ×絶世美少女~【完】
過去 -Taiga-
【大河side】
体が熱い。
あいつの手を握る手に力が籠る。
早く早くと焦った様に進む足は、菜穂を小走りにさせていた。
人気のない岩場まで連れて来て、菜穂の腕から手を離す。
そして、岩に手をついて菜穂を岩と自分の体で閉じ込めた。
「たい、が……?」
焦った様に上ずった声が、昔を思い出させる。
俺の名を呼ぶあの頃の菜穂の声が、俺の脳裏に浮かんで消えた。
「なんだよ、これ」
「え…?」
「なんだっつってんだよ」
視線を下に落とす。
目付きが悪くなっているのは、自分でも自覚していた。
見えたのは、菜穂の昔とは違うライトブラウンの短い髪。
そして、細い体を覆う薄手の上着と、本当に大事な所しか隠れていない黒の紐ビキニ。
あの頃とは違う。
今は力だって、身長だって、菜穂に余裕で勝っている。
俺は片手で菜穂の顎を固定して、顔を近付ける。
菜穂は拒否するように首を振ったけれど、俺はそれをも押しのけて深いキスを落とした。
「ふぅ……っん」
菜穂の吐息にも似た声が漏れて、どこか嬉しく切なくなる。
久しぶりに聞いたそれが、俺の胸を痛めた。
――パンッ
左頬に走った痛み。
比較的小さなそれに、我に返る。
そんなに痛くは無い。
痛くは無いけれど……泣きそうな菜穂の表情が、俺を苦しめる。
「何すんのよ……この遊び人っ!!」
それは、残酷な叫び。
あの頃とは違うと、主張する、叫び。