心の中で。
「あはっ、いいんです。気にしないで?」


慌てる様子が本当に申し訳なさそうで、怒る気になんてならなかった。


「どうしてもこれだけ渡したくて、追いかけるつもりだったんだ。だけど、声が聞こえて…本当に!悪かったな!じゃっ!」



そう言ってあたしの手に、一枚の紙切れを渡すと、一気に走ってすぐ中に入ってしまった。



「なんだろ…?」


紙切れを開くと、


───────
090-XXXX-XXXX
永井賢
───────


それだけが書かれていた。





これが、賢とあたしの出会いだった。






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