心の中で。
「…っ逃げんな!」



足のはやさが敵うはずもなく、ぎゅっと腕をつかまれる。


「…なんか、悩んでるんだろ?」


すごく優しく、でも真剣にそう言う賢を見て、自分の瞳にじわっと涙がにじんでくるのがわかる。





「っ…うっ…あたし、好きな…人がいて…っでも、部活で…うぅ…何にも……っ」


自分でも何を言ってるのかわからなくて、ぐちゃぐちゃの気持ちを初めて、口に出した。





賢はぽんっとあたしの頭に触れて、


「ゆっくり…話せ?いくらでも、俺が聞いてやるから。」


そう言ってあたしの手を引いて、浜辺に座らせた。
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