心の中で。
「奈津が呼びとめちまって、ごめんな。」




それだけ言って、立ち去ろうとしたとき、佐野先輩はもう一度だけ振りかえって、







「幸せにな。」






そう、呟いた。


とっても小さな小さな声だったけど、絶対聴き間違いなんかじゃない。


佐野先輩には、まるであたしの気持ちがわかってたみたいに、


この言葉が、心の中で響いた。




「俺たちも、いくか!」


そう言って賢が歩き出そうとしたとき、賢の服のすそを、引っ張った。


「…どした?」


立ち止まって振り向く賢。




「賢。…話したい事があるの。」
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