心の中で。
「…なぁ、高崎。」

「あっ!ここですっ」

あたしが指さす先には、あたしの家。

…もう着いちゃった。


「…ほんとに近ぇな。そんじゃ…また明日。」


それだけ言うと、すぐくるっと来た道を向いてしまった。


「えっ、あ、ありがとうございました!」


焦ってお礼を言って、家の前で先輩の後ろ姿を見送った。



ずいぶんあっさり帰っちゃうんだなぁ。

…ちょっとがっかりしたあたしがいて。



初めて、家が学校に近いことを恨んだ。



それでこの高校選んだのに勝手だな、あたし。




ねぇ…先輩。

あたし…先輩のことが…好きかもしれない。





…でも、ちゃんとわかってる。

先輩はバスケに夢中。


あたしなんかに邪魔されるわけ、いかないよね。



ましてや、『部内恋愛禁止』

…なんだから。



あたしも、何かに打ち込もう。


でないと、先輩に追い付けない。



この気持ちは、まだ「かもしれない」だから。

気づかないふりして、まだこのままで…いたい。
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