心の中で。
「───そこまでにしとけよ。渡井。」


声がした方に渡井君が振り向いた。

「哲也先輩…。」




え?

渡井君の腕の力がゆるんで、あたしも振り向く。



そこには………佐野先輩の姿。



「渡井、俺は今恋愛よりバスケに夢中だし、マネージャーをそういう対象になんか見たことねぇ。黙っててやるから………もうやめろ。」



ねぇ先輩…。

来てくれて、嬉しいです。


だけど………聞きたくなかった。



あたしはやっぱり、マネージャー。

それ以上でもそれ以下でもないんですね……。

わかっていたはずなのに、どうしてこんなに胸が苦しくなるんだろう。

先輩の口から聞いただけで、目の前が真っ暗になった気がした。






「は…はい。誤解してすみません!あと美玲も…ごめんな?じゃっ!!」


そう言うとそそくさと渡井君は走り去ってしまった。




残った佐野先輩とあたしの二人のまわりは、重く暗い空気で包まれていた…

< 87 / 194 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop