心の中で。
渡井が立ち去った後、俺たちは黙ったままだった。



「あ…悪かった、な。邪魔して…」


勝手に乱入したんだから、これだけは謝っておこう。





すると、高崎は重い口を開いて…一番聞きたくない言葉を口にした。


「いえ…ありがとうございました。あたし…もう本格的に勉強しないといけないので、体育館行く余裕なくて…。携帯も、あんまりいじりたくなくて。あと、最近毎日すみませんでした、真剣な先輩の邪魔して。」


そう言って立ち去ってしまった。




なんでだよ…。

邪魔なんかじゃないのに。



今気付けば、バスケばかりの俺の心は、高崎に多く占領されていた。

高崎がいたから、頑張れたんだよ。



今になって、そう思う。




次の日、高崎が来ない…一人きりの自主練。



「好き……か。」




心の中で、呟いた。







「邪魔してすみません…か。」

俺は、自分の気持ちに…



気付く前に失恋した。

< 92 / 194 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop