IMITATION LOVELESS


刹那は立ち上がると空を見上げて呟いた。


「サヨナラをもっと早く……ふ、この棘の痛みも嘘も気付かないフリが出来たかもしれないな…」


刹那は瞼を下ろし、憐の笑顔を思い浮かべる。

憐を殺めたくないと思っても、殺めなければならない。

自分の気持ちに嘘をつき、大切なモノを一生取り戻すことの出来ない場所に葬ることは刹那にとって、何よりも、どんなコトよりも辛かった。


「前…優夜が言ってたな…。 大切な人は、護れる人にしろって…」


護ることが出来ない愛しいヒト。
許されないと知っていても、心の底から愛しいと思う憐を思い浮かべる。


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