IMITATION LOVELESS


憐はわからないといった表情で動かない。
しかし 何かに気が付いたのか、唇を噛みしめ紅い涙を一筋だけ流し、重い口調で囁く。


「……優夜と刹那は?」


憐が愛しい人の名前を呟いたとき、後ろから足音が聞こえた。

振り向くと、貧相な格好をした見知らぬ青年が斧を持って駆け寄ってきた。


「姫! そこを動く…」


青年の言葉が途切れる。
正しく言うと、双子が青年を殺めたのだ。


「ね…言われた時間より早くない?」

「まさか…、向こうが優夜達に嘘をついたんじゃ」


双子は顔を見合わせると憐の腕を掴み走り出した。


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