IMITATION LOVELESS


「きゃ…!」


尻餅を着いてしまう憐。
ぶつかった人の顔を見るために顔を上げる。

憐は顔を綻ばせた。


「蜩…、優夜と刹那 知らない?」

「………召使いさんなら、この先に…」

「ありがとう、」


憐は蜩とすれ違いに微笑んでから、指差された方向へ走り出す。

蜩は小走りで走っていく憐の背中に弓矢の矢先を向ける。

狙いを定めて弓を引く。


「あと五秒で振り向かなかったら……殺しちゃうよ? 憐…」


蜩は小さな声で囁くと弓を更にしならせる。

矢先が鈍く光る。


< 173 / 192 >

この作品をシェア

pagetop