IMITATION LOVELESS
名前を呼ばれ、振り返る。
ソコにはボロボロの服を着ている老人が立っていた。
城の者とは思えない貧相ぶりだった。
「おじさま…」
「げっ…」
刹那は立ち上がり、優夜を背中に隠す。
優夜は刹那に背中を合わせて腕を組む。
「姫の…様子は?」
「…言われたことは守ります。 姫を殺せばいいんですよね?」
老人は小さく頷いた。
優夜は横目で老人を見つめながら舌を出す。
その行動が勘に障ったのか、老人は優夜を睨み付ける。
「優夜、貴様…」
「俺はアンタの言うことなんて聞かない。 刹那についてくだけだから」
刹那は優夜を見てから老人にお辞儀をする。
顔を上げると微笑み、踵を返す。