IMITATION LOVELESS
「れ…」
「……」
「え…?」
憐が何かを言ったのはわかったが、二人は聞き取れなかった。
二人が聞き返すと憐は扉から全身を見せた。
その左手にはナイフが握られていた。
「お別れ…」
「憐…!?」
憐は自ら、握っていたナイフの刃先を左胸に添えた。
その途端、優夜と刹那が憐に駆け寄る。
慌てて憐のナイフを弾き飛ばす。
カラン…
ナイフが床に落ちた音が響く。
その時には憐は二人に抱き締められていた。
きつく、強く。
優しく、壊れ物を扱うように。
離さないように…。