IMITATION LOVELESS
「紫の薔薇は勿論、刹那だよ?」
優夜に抱きつきながら首を捻り顔だけを刹那に向けた。
憐は優夜に向けた笑顔に勝るとも劣らない笑顔で刹那に笑いかける。
どんなに美しく愛らしい満面の笑顔も憐の場合はどこか儚げだった。
「あの薔薇は一番背が高くて、逞しい刹那にピッタリ」
憐が唇を動かすたびに二人の二つの瞳からは大粒の涙が一滴ずつ溢れていった。
「え……二人とも?」
憐が困ったように慌てふためく。
しかし、涙を流している二人の顔は悲しみではなく、幸せそうな笑顔に包まれていた。