IMITATION LOVELESS


谺は寂しそうに笑うと憐の髪に自分の髪飾りを添えた。
もう一度笑うと踵を返し、走っていってしまった。

その場に取り残された魑はため息をつき隠し持っていた袋を憐に渡す。

憐は首を傾げながら袋を受け取る。

憐が袋を受け取ったのを確認した魑は木枯らしの如く、一瞬にしてその場から姿を消した。

憐は二人を起こさないように袋の中身を確認する。


「あ…」

中身は紅と漆黒の髪飾りだった。
真っ赤な薔薇の花と真っ黒なリボンが絡み合っている不思議な髪飾りだった。

結っていた髪紐をほどき、髪飾りを左耳の上に添える。


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