Melt
「そうだよね?遠山さん。」
見えない火花が飛んでるような痛い気配に思わず肩をすくめる。
向こうで追い払われた大地が戻るに戻れずに固まってしまっている。
俺は女兄弟しかいないから慣れたけど、免疫がないと男子にこれはかなりきつい。
「えと、うん。」
今井が鋭い目で遠山を見た。
その次は、初音。
でも初音はなんでもないように笑顔のままで、遠山の机まで向かうと課題のノートを拾い上げる。
「遠山さんも三問目ひっかかった?私も解けなくて、九十九に教えてもらったんだ。」
難しかったよね?と遠山に笑いかける初音は普通だった。
「早川さんでも解けなかったの?」
今井が驚いたように言った。
そりゃ、ろくに計算式読まないで答えだけ追ってればそうなるかもな。
実力テストの結果を見て知ったけど、初音は学年で常に5番以内に入るらしい。
そんな初音でも解けないなら、たいていの人は解けない。
「九十九は私のこと差し置いて数学1位だったもんねぇ?」
なぜそこでおれに振るんだ。
「意外と根に持ってんのか?」
「べっつにぃ。あ、そうだ遠山さん。よかったらお昼も一緒に食べよう。」
遠山はあわてたように頷いていたけど、今井はなんとも言えない顔で自分のグループに戻って行った。